NPO法人の会計について勉強を始めました。その3「固定資産と借入金を何故注記するの?」

今回は、財務諸表の注記の項目「固定資産の増減内訳」と「借入金の増減内訳」についてまとめます。

(前回)

先に結論

財産諸表の注記に「固定資産の増減内訳」と「借入金の増減内訳」の項目が必要である理由を一言で言えば、それは次の通りです。

一昔前に主流であった「収支計算書」には固定資産や借入金の増減を書けるが、現在の「活動計算書」には書けないから

なぜ財務諸表に固定資産や借入金の増減を書かなくてはならないか
では、収支計算書と活動計算書はどう違うのでしょうか。

収支と損益の違い[1]

まず、活動計算書では損益を計算します。
(営利企業では損益計算書と呼んでいますが、NPO法人だと「非営利なのに損益を気にするとはけしからん!」という声があるそうで、わざわざ「『活動』計算書」と呼び変えているようです。)
なので収支計算書と活動計算書の違いは、そのまま収支損益の違いになります。

収支損益はどちらもお金の出入りを表します。
収支既に終わったお金の出入りを表すのに対し、
損益約束されたお金の出入りを表すという違いがあります。

例えば、次のような場合を考えましょう。




~2022/10/18~

太郎さん<br>2022/10/18 18:00
太郎さん
2022/10/18 18:00

この前スーパーでアワビ買ったら、
中から真珠が出てきたw
10,000円で売ってあげるよ

花子くん<br>2022/10/18 <br>19:00
花子くん
2022/10/18
19:00

いいの?

でも私、今8,000円しか出せない…

太郎さん<br>2022/10/18 20:00
太郎さん
2022/10/18 20:00

今は一旦8,000円払ってくれればいいよ。
2,000円はまた今度で。

花子くん<br>2022/10/18 21:00
花子くん
2022/10/18 21:00

花子くんがAmaz〇nギフト券 8000円を支払いました

太郎さん<br>2022/10/18 21:00
太郎さん
2022/10/18 21:00

お買い上げありがとうございますww

~2022/10/19~

太郎さん<br>2022/10/19 18:00
太郎さん
2022/10/19 18:00

今郵便ポストに入れたよ~

~2022/10/20~

花子くん<br>2022/10/20 18:00<br>
花子くん
2022/10/20 18:00

届いた!

太郎さん<br>2022/10/20 18:00
太郎さん
2022/10/20 18:00

どうだった?

花子くん<br>2022/10/20 19:00
花子くん
2022/10/20 19:00

超いい!ありがとう~

太郎さん<br>2022/10/20 19:00
太郎さん
2022/10/20 19:00

よかった。

~2022/10/21~

花子くん<br>2022/10/21 18:00
花子くん
2022/10/21 18:00

花子くんがAmaz〇nギフト券 2000円を支払いました

18:00 10月21日(金) 34%  
10月20日19時の時点(真珠の感想を花子くんが述べた時点)を考えましょう。
このアワビ真珠の取引において、太郎さんは1万円を手に入れる権利を得ました。
このことを、「収益が1万円である」といいます。
一方で、太郎さんはまだ8千円しか手に入れていません。
このことを、「収入が8千円である」といいます。

逆に花子くんは1万円を支払う義務を負っています。
このことを「費用が1万円である」といいます。
一方で、花子くんはまだ8千円しか支払っていません。
このことを「支出が8千円である」といいます。

収益費用を合わせて損益といいます。
また収入支出を合わせて収支といいます。

損益 – 収支 = 貸し借り

前章では、収支損益の違いについてまとめました。
改めて一言でいえば、
収支は移動したお金、損益は移動すべき
と言えると思います。
アワビ真珠の取引において、10,000円は花子くんが太郎さんに支払いすべきお金であって、8,000円は支払いしたお金です。
そして10,000円と8,000円の差額である2,000円は何なのでしょうか。

太郎さんの目線で考えれば、アワビ真珠という「10,000円分の価値のある財産」を花子くんにあげたのに、花子くんからは8,000円しか貰えていないわけです。
8,000円を、「10,000円2,000円」として考えましょう。
つまり、「花子くんから10,000円を受け取ったが、それと一緒に2,000円まで余分に渡された」と考えます。
受け取った10,000円は、アワビ真珠と交換しただけです。
で、余分に貰った2,000円は、符号を反転させれば「取られて失った2,000円」です。

太郎さんは今、花子くんに2,000円を持っていかれていて、で、後日その2,000円を受け取ることが出来るのですから、これは2,000円貸しているも同然です。

つまり、「収益収入貸し」と考えることが出来ます。
同様に、花子くんの目線で考えると「費用支出借り」と考えることが出来ます。

損益計算では、貸し借りが分からない[2]

太郎さんの収入は、10月18日の8,000円と、10月21日の2,000円です。
そのうち2,000円は、花子くんに貸していたものです。
このように、貸していたお金は、いつか収入になります。
だからこそ収入を観察すれば貸しもわかるし、
支出を観察すれば借りもわかるのです。

しかしながら、太郎さんの収益は「10,000円」というだけであり、これだけでは、そのうちいくらが「貸し」であったのかまではわかりません。

また、そもそも貸したお金は返ってくるべきで、借りたお金は返すべきです。この意味で貸し借りは「移動すべきでないお金」です。したがって、「移動すべきお金」である損益を報告すべくする「活動計算書」に、貸し借りは現れるはずがない、と言えるかと思います。

固定資産とは何か[3][4]

前章で、借入金の増減がなぜ活動計算書に表せないか、お分かりいただけたかと思います。
本章では、固定資産の性質を知ることで、なぜ固定資産が活動計算書に表せないかについて考えます。

固定資産とは、長期(1年超)にわたって使用される一定金額以上の資産をいいます。(会社法人が使う企業会計原則などでは「正常営業循環基準」なんてのもあるみたいです。)
こういった固定資産の中には、時間の経過と共に価値が減る(と、お上が認めた)ものがあります。
そのようなものは、毎年度一定額(または未償却残高の一定割合)ずつ、「資産としての価値を減らして計上し、その減らした分の金額を費用として計上する」ということをします。これを減価償却といいます。
つまり、逆に言えば、減価償却する固定資産は、「一括では費用に現れない」わけです。
よって、活動計算書にも現れません。
これを問題視した声があがったため、「固定資産の増減内訳は、財務諸表の注記に示す」と決められたようです。

感想

借入金の増減内訳や、固定資産の増減内訳は、どちらも「収支計算書にはあったのに、活動計算書には書かれなくなったから」という理由で、注記が必要となったことが分かりました。

つまり、「収支計算書の情報」を、注記に切り貼りするわけです。

なのであれば、活動計算書と別に収支計算書も作って、それをそのまま提出した方が、切り貼りの作業がない分、楽だし、尚且つ「丁寧に情報開示している」というアピールにもつながるのかなと思いました。

(次回予告)

次回は、複式簿記の作り方についてまとめた記事です。
(2022年10月22日 18:00~公開)

NPO法人の会計について勉強を始めました。その4「お小遣い帳を複式簿記にグレードアップしよう (1/3) 」
今回は、「お小遣い帳」を複式簿記にグレードアップする手順についてまとめます。 複式簿記を付けられるようになれば、活動計算書や貸借対照表を楽に作れるようになります

(参考)

[1]https://ameblo.jp/clash5150/entry-11224582922.html
[2]https://www.youtube.com/watch?v=QCSUF4WuDAk
[3]https://www.parea.pref.kumamoto.jp/pdf/8_1081_353_up_2JRUZY0I.pdf
[4]https://advisors-freee.jp/article/category/cat-big-01/cat-small-02/9163/

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